第4回東京工業大学運営諮問会議議事要録
                                                                            

1.日  時     平成15年10月8日(水) 14時〜16時                
 
2.場  所    東京工業大学事務局1号館3階 学長会議室                
 
3.出 席 者   大見忠弘 委員(東北大学名誉教授)                         
        金子尚志 委員(日本電気株式会社相談役)                  
        田中郁三 副会長(学校法人根津育英会武蔵学園理事長・学園長) 
        千野  孝 委員(社団法人蔵前工業会相談役,元住友電気工業株式会
                社副社長)                               
        長尾 真  委員(京都大学長)
        廣中平祐  委員(財団法人数理科学振興会理事長)
          
              相澤学長,小川,下河邊の各副学長,中澤理学部長,三木理工学研究
        科長兼工学部長,大倉生命理工学研究科長兼生命理工学部長,大町総
        合理工学研究科長,瀧口情報理工学研究科長,圓川社会理工学研究科
        長,石田資源化学研究所長,藤井原子炉工学研究所長,酒井学術国際
        情報センター長,佐伯外国語研究教育センター長,横山附属図書館長,
              佐々木事務局長,その他関係部長等   

  議事に先立ち,佐藤会長が欠席のため,規則第6条3項に基づき田中副会長が議事進
行することとなった。
 学長から,挨拶及び本日の会議においては,本学の現状,法人化への姿勢及び国立大
学法人東京工業大学の制度設計について御意見を賜りたい旨の要請があり,また,10
月1日付けで法人化後の学長予定者として,文部科学大臣から指名があった旨の報告が
あった。
 引き続き,副会長から委員の紹介,学長から大学側出席者の紹介が行われた。

4.議   事
                                          
 (1) 本学の概要とこれまでの運営諮問会議意見の対応
      学長から,第1回から第3回までの運営諮問会議における意見に対する対応等に
  ついて説明があった。

(2)法人化後の本学の体制について
   学長から,@国立大学法人制度について,A本学の制度設計についての説明があ
  った後,次のとおり意見交換を行った。
    ( ●・・・委員 ○・・・大学側出席者 以下同じ)
   ● これまで国立大学の教員は公務員であったので,夜中や休日でも研究教育に
    当たることができたが,非公務員型となり労働協約を結ぶことになると,企業
    の社員と同様,教員も労働者と扱われ,時間外労働が制限されることになるの
    ではないか。これでは,大学の機能は発揮されないし,自分の才能を磨こうと
    している若い人達が徹底的に研究して才能を十分に伸ばすチャンスが奪われて
    しまうのではないか。諸外国は研究職や技術者を労働者という立場では扱って
    いない。国立大学が法人化する今が,制度変更を認めさせるチャンスではない
    か。現行制度が日本の国際競争力を徹底的に弱める最大の要因だと思う。
   ○ 国会審議でも様々な議論を経た上で国立大学法人法は成立しており,基本を
    変えることは難しいが,例えば勤務体系における裁量労働制の導入など具体的
    な対応は考えられる。
   ● 非公務員型の法人となるのなら,研究戦略室の研究戦略企画官等の職名に 
    「官」をつける必要はないのではないか。
   ○ 今までの教官,事務官は教員,事務職員とすることで大体統一がとれたが,
    企画官の職名は検討したい。
   ● 制度設計はシステマチックに検討され取りまとめられているが,新しい法人
    のもとで大学が本当の意味で一体どのくらい実力を発揮できるのか。
     例えば,教員はなかなか委員会などにも出席できないほど多忙を極めている
    ということで,各大学はその支援策としてティーチング・アシスタント(TA)
    やリサーチ・アシスタント(RA)の制度を導入したが,TA,RAの実効が
    なかなか上がらないという問題があると聞いている。
     また,産業界から見ると,産学連携と言っても片側通行で交流が真剣に行わ
    れず,相互理解が深まらないと感じる。例えば,サバティカルの実施をもっと
    真剣に考えることが必要と考えるが,法人化に伴って,どこまで実施可能で,
    どこまで実施するのか。
   ○ 本学は,今回の制度設計の中で,全学委員会を原則的に廃止することとして
    おり,これは大学組織としては大変な変革である。これまで教員は相当の時間
    を委員会に費やしてきたが,委員会を整理し,その機能を実質的に室に集約さ
    せる。室の職務に当たる教員には,例えば,講義の負担を軽減するなどの配慮
    を各部局でしている。
     TA,RAともに現在は制度として確立しているが,本学では,早くから実
    施するなど,他大学に比べ先行していると考えている。21世紀COEプログ
    ラムでは,RAなど若手人材育成に相当の経費を充当できることとなっており,
    当面このプログラム関連分野などでの支援体制をできる限り整備していく。
     人材交流については,内閣府総合科学技術会議等,日本の科学技術政策を推
    進するための要のポストに,2〜3年の期間本学教員を派遣しており,そこで
    得た知識・体験を研究面だけでなく大学運営にも反映できるよう全学的な認知
    の基での人材育成制度も推進している。
     また,産学連携の要として文部科学省,経済産業省から本学の専任教員に人
    材を招聘しており,更に,産学連携推進本部の設置に伴って,産学連携担当の
    教授を民間等から採用することとしている。
     サバティカルは重要な項目と考えており,大学全体として実施制度を統一す
    るのではなく,基本的には各部局において,サバティカルの対象になった教員
    がいない間のきめ細やかな対応を含めた体制等を整備,推進することとしたい。
     兼業については,法人化により大幅な規制緩和となるが,本学では,本務は
    きちんと行いつつ最大限の兼業時間を規制するだけとして,収入等は問わない
    方向での制度設計をしている。
   ● 法人組織と大学組織,あたかも2つの組織があるように見えるが,損益単位
    はどうなるのか。
   ○ 各国立大学がそれぞれ法人格を持ち,その法人が大学を設置する。即ち国立
    大学法人東京工業大学が東京工業大学を設置し運営することとなるので,会計
    上の責任は収入,支出とも法人の名において行うこととなる。
   ● 財団法人東京工業大学後援会や社団法人蔵前工業会(本学同窓会)などの団
    体と国立大学法人との関係を明確にしておいた方がいいのではないか。同窓会
    としても,寄附の面でもできるだけ応援したいと考えているが,大学側の要望
    がよく分からない。
   ○ 関係法人と大学との関係は今までと同じである。今後,奨学寄附金の受け入
    れも含め,広い意味での寄附金の扱いについて,社団法人蔵前工業会等とも十
    分話し合っていきたい。
   ● 経営協議会などのメンバーも来年4月までに決定されると思うが,その工程
    表はできているのか。
   ○ 本学としての工程表は持っている。本日示した制度設計の基本骨格である中
    間報告書では,まだ検討が不十分の部分もあるものの具体的な内容がすべて含
    まれて枠組みはまとまっている。これに沿って規則の制定等を行う実行の段階
    である。
   ● 学長としてここまでやりたいというマニフェスト的なものはあるのか。
   ○ 6年間の目標を設定した中期目標となる。配付資料は素案となっているが,
    文部科学省に提出済みのものである。今後,文部科学省との間でやりとりの後,
    来年4月以降,法人の発足時点でこの案が確定し,文部科学大臣が定め公表さ
    れることとなる。
   ● 理事・副学長が各室を主宰して,企画立案を行うとしても,執行面でどこま
    での権限がもてるのか。例えば,研究協力など執行面は事務局長の下での権限
    になっているように思う。
   ○ 事務局の実務執行部門は従来型であるが,室には室長の下に教員と事務職員
    の室長補佐を置き,かつ,教員からなる企画官,専任又は兼務の事務職員を配
    置しており,基本的に教員,事務職員の融合組織である。
     室の役割は,当初,主として企画立案であったが,徐々に執行まで携わらな
    いといけないようになってきた。構成員に事務職員が入っているので執行まで
    可能な体制となっている。事務局の執行部門に副学長の権限がどこまで及ぶか
    については,間接的にはなるが,それぞれ室の中は副学長の権限で行われてい
    る。
   ● 執行面を含めた現場の実態把握ができない,事務部門からの情報伝達が不十
    分になったりして,結果として浮き上がった存在,あるいは企画立案だけにな
    ってしまう恐れがある。そういう面で副学長の執行権限がどこまで及ぶのか難
    しい面があるのではないか。
   ○ 最初に設置した研究戦略室と評価室はうまく機能してきている。事務職員も
    ただ支援をするという形ではなく,ラウンドテーブルで企画立案から加わり,
    執行面まで見据えた形で進めるという仕組みが定着してきたことも踏まえて,
    他の室も同様の体制を考えている。室の増加によって,従来型の実務執行部門
    から事務職員を割り当てることについては,事務局の理解もあった。
   ● 今まで事故等に伴う訴訟においては,当事者及び所属機関に加えて国も訴え
    ることができた。また,訴訟に関する資金については,基本的には設置者であ
    る国,文部科学省に責任があり,資金の手当ができた。しかし法人化後は,大
    学の設置者は法人となり,現在のように直接国を訴えることはできなくなる。
    国立大学法人として,例えば長期的なローンのシステム,保険制度を活用しな
    ければならないなどの問題が出てくるのではないか。
   ○ 火災その他の事故に対する損害保険については,現在,国立大学協会で具体
    的な検討が行われており,全国立大学を加入対象として,保険会社が組織的に
    対応する方向となっている。
   ● 今までの事務職員は,教員とは別の独自組織であり,文部科学省から派遣さ
    れる職員と学内採用された職員の二重構造となっている。文部科学省から派遣
    された職員は,2年程度で異動し,文部科学省との連絡調整,予算の獲得等の
    役割を持ち,国と大学の両方に仕える存在である。法人化後は,これらの職員
    の従来の役割は非常に小さくなり,第2期の中期目標期間が終わる,大体12
    年先には,事務局の姿は根本的に変わると思う。今後,事務局をどのような形
    で法人に組み込むか,図式をきちんと示しておくべきではないか。
   ○ 事務組織の位置付けについては,今回,事務局の再編が制度設計に盛り込ま
    れており,また,事務職員の採用形態についても,今後は,国家公務員試験で
    なく国立大学法人職員としての地区別統一採用試験を実施して採用し,また,
    統一採用試験合格者以外からも選考採用するなど個々の大学の判断が重要にな
    るので,現行制度は徐々に変化していくと考えている。
   ● これまでの国と国立大学の倫理規定は,関係業者とのゴルフや接待の規制な
    ど幼稚なことを定めている。アメリカの大学では,大学らしい独自の倫理規定
    として,Conflict of Interest(利益相反)と,Conflict of Responsibility
    の2つの項目がある。Conflict of Responsibilityは,例えば,教授が会社の
    社長をしており,大学での出勤日に会社の工場が火災であってもきちんと講義
    をしなければいけないということである。あるいは,サバティカル以外で一定
    期間他大学において給料を得るときは,本務の大学での給料はもらわないなど
    ということが本当のResponsibilityである。日本ではそういう感覚が低い。法
    人化に当たり,こういうことを真剣に考えるべきと思う。
   ○ 一般的な意味での倫理に関しては,いろいろな場面で不都合なことがあるこ
    ともあり,ご指摘の2項目について注意深く検討していく必要があると考える。
   ● サバティカルは,本来,大学に対して教育研究等で多大な貢献をしたことに
    伴う,ある種の報酬であり,その期間,大学に出勤する必要はなく,どこに居
    るかも問わない制度である。
          以前在職した大学で,半年間又は1年間のサバティカル制度を導入した。こ
    れは,低学年教育を一定期間以上担当したという条件の下で,目的等を審査の
    上許可し,更に終了時には学長を座長とする委員会でその成果を発表させた。
    成果発表時には相当厳しい批判をしたので,事例として紹介しておく。

(3)その他
    ◎ 副会長から,委員の任期は来年3月31日までであり,また,国立学校設置法
   に基づき設置されている本会議は法人化後は廃止されるため,本日の会議が最後
   となる予定である旨の発言があった。

    ◎ 学長から,本日の意見については,今後学内で十分議論を行い,本学の運営上
   の参考とすること,運営諮問会議の議事内容については,各委員に確認の上公表
   する旨の発言があり,また,委員のこれまでの協力に対する謝辞があった。

                                                              以 上