○国立大学法人東京科学大学ヒトES細胞の使用に関する規則
令和6年10月1日
規則第113号
(目的)
第1条 この規則は、ヒトES細胞の使用に関する指針(平成31年文部科学省告示第68号。以下「指針」という。)に基づき、人の尊厳を侵すことのないよう、生命倫理的な観点から遵守すべき基本的な事項を定め、もって国立大学法人東京科学大学(以下「大学」という。)におけるヒトES細胞を使用する研究の適正な実施を図ることを目的とする。
一 胚 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号。以下「法」という。)第2条第1項第1号に規定する胚をいう。
二 ヒト胚 ヒトの胚(ヒトとしての遺伝情報を有する胚を含む。)をいう。
三 ヒト受精胚 法第2条第1項第6号に規定するヒト受精胚をいう。
四 人クローン胚 法第2条第1項第10号に規定する人クローン胚をいう。
五 ヒトES細胞 ヒト胚から採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、胚でないもののうち、多能性(内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞に分化する性質をいう。)を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又はそれに類する能力を有することが推定されるものをいう。
六 生殖細胞 始原生殖細胞から精子又は卵子に至るまでの細胞をいう。
七 樹立機関 ヒトES細胞を樹立する機関をいう。
八 使用機関 ヒトES細胞を使用して基礎的研究を行う機関(海外機関を除く。)をいう。
九 分配機関 他の機関から寄託されたヒトES細胞(基礎的研究の用に供するものに限る。)を第三者に分配する業務を実施する機関をいう。
十 臨床利用機関 法令に基づき、医療(臨床研究及び治験を含む。)に用いることを目的としてヒトES細胞を使用する機関(海外機関を除く。)をいう。
十一 海外機関 外国において基礎的研究又は医療に用いることを目的としてヒトES細胞を使用する機関をいう。
十二 使用計画 使用機関が行うヒトES細胞の使用に関する計画をいう。
十三 使用責任者 使用機関において、ヒトES細胞の使用を総括する立場にある者をいう。
(ヒトES細胞に対する配慮)
第3条 ヒトES細胞を取り扱う者は、ヒトES細胞が、人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させて樹立されたものであること及び全ての細胞に分化する可能性があることに配慮し、誠実かつ慎重にヒトES細胞の取扱いを行うものとする。
(使用の要件)
第4条 ヒトES細胞の使用(次項に定めるものを除く。)は、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
一 次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
二 ヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び意義を有すること。
2 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞の使用は、特定胚の取扱いに関する指針(平成31年文部科学省告示第31号。以下「特定胚指針」という。)第6条第2項に規定する目的に限り、行うことができるものとする。
3 使用に供されるヒトES細胞は、次に掲げるものに限るものとする。
一 ヒトES細胞の樹立に関する指針(平成31年文部科学省・厚生労働省告示第4号。以下「樹立指針」という。)で定める要件を満たして樹立されたヒトES細胞(生殖細胞の作成の用に供される場合には、生殖細胞の作成を行うことについてのインフォームド・コンセントを受けていることその他の樹立指針で定める要件を満たして樹立されたヒトES細胞に限る。)
二 外国で樹立されたヒトES細胞で、樹立指針と同等の基準に基づき樹立されたものと認められるもの(生殖細胞の作成の用に供される場合には、当該外国の法令等及びヒトES細胞の提供に関する条件においてヒトES細胞から生殖細胞を作成しないこととされていないものに限る。)
(禁止行為)
第5条 ヒトES細胞を取り扱う者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒトES細胞から個体を生成すること。ただし、法第4条に定める特定胚を作成する場合であって、特定胚指針の適用を受ける場合にあっては、この限りでない。
二 ヒト胚へヒトES細胞を導入すること。
三 ヒトの胎児へヒトES細胞を導入すること。
四 ヒトES細胞から生殖細胞の作成を行う場合には、当該生殖細胞を用いてヒト胚を作成すること。
(人クローン胚の作成に用いられた体細胞の提供者の個人情報の保護)
第6条 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞の使用又は分配(当該ヒトES細胞から作成した分化細胞の譲渡を含む。)に携わる者は、体細胞の提供者に関する情報について、個人情報の保護に関する法令等を遵守するほか、当該情報の保護に最大限努めるものとする。
(使用機関の基準)
第7条 大学は、使用機関として、次に掲げる事項を遵守するものとする。
一 ヒトES細胞を使用するために必要な施設及び人員を有すること。
二 ヒトES細胞の使用に関する技術的能力及び倫理的な識見を向上させるために必要な教育及び研修(以下「教育研修」という。)を実施するための計画(以下「教育研修計画」という。)が定められていること。
(理事長の責務)
第8条 理事長は、大学の研究におけるヒトES細胞の使用に関して、総括し責任を負う。
2 理事長は、前項の責務を実行するための権限及び事務を、学長へ委任する。
(学長の任務)
第9条 学長は、次に掲げる業務を行うものとする。
二 ヒトES細胞の使用の状況を把握し、必要に応じ、使用責任者に対しその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。
三 ヒトES細胞の使用を監督すること。
四 指針及びこの規則を周知徹底し、これを遵守させること。
五 ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画を作成し、教育研修を実施すること。
六 その他大学におけるヒトES細胞の使用に関し必要と認めること。
2 学長は、使用責任者を兼ねることができない。ただし、学長が指名する理事・副学長に、この規則に定める学長としての業務を代行させる場合は、この限りでない。
(使用責任者の任務)
第10条 使用責任者は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 ヒトES細胞の使用に関して、内外の入手し得る資料及び情報に基づき、使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について検討し、その結果に基づき、使用計画を記載した書類(以下「使用計画書」という。)を作成すること。
二 ヒトES細胞の使用を総括し、研究者に対し必要な指示をすること。
三 ヒトES細胞の使用が使用計画書に従い適切に実施されていることを随時確認すること。
四 ヒトES細胞の使用に関する教育研修に研究者を参加させること。
2 使用責任者は、ヒトES細胞に関する倫理的な識見並びに十分な専門的知識及び技術的能力を有するとともに、前項各号に掲げる業務を的確に実施できる者とする。
(倫理審査委員会)
第11条 大学に、次に掲げる業務を行うため、国立大学法人東京科学大学ヒトES細胞倫理審査委員会(以下「倫理審査委員会」という。)を置く。
一 指針及びこの規則に即して、使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について総合的に審査を行い、その適否、留意事項、改善事項等に関して学長に対し意見を提出すること。
二 使用の状況について報告を受け、必要に応じて調査を行い、その留意事項、改善事項等に関して学長に対し意見を提出すること。
2 倫理審査委員会は、審査の記録を作成し、これを保管するものとする。
3 倫理審査委員会の構成等については、国立大学法人東京科学大学ヒトES細胞倫理審査委員会細則(令和6年細則第65号。以下「委員会規則」という。)に定めるところによる。なお、委員会規則は公開するものとする。
4 使用計画を実施する使用責任者及び研究者は、倫理審査委員会の審議及び意見の決定に同席してはならない。ただし、当該倫理審査委員会の求めがある場合には、その会議に出席し、使用計画に関する説明を行うことができる。
5 倫理審査委員会は、使用計画の軽微な変更等に係る審査について、当該倫理審査委員会が指名する委員による審査を行い、意見を述べることができる。当該審査の結果は、全ての委員に報告されなければならない。
6 倫理審査委員会の議事の内容は、当該倫理審査委員会に関する規則により非公開とすることが定められている事項を除き、公開するものとする。
7 前各項に定めるもののほか、倫理審査委員会の組織及び運営等に関し必要な事項は、別に定める。
(学長の了承)
第12条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用に当たっては、あらかじめ、使用計画書を作成し、学長の了承を求めるものとする。
2 使用計画書には、次に掲げる事項を記載するものとする。
一 使用計画の名称
二 使用機関の名称及び所在地
三 使用責任者の氏名
四 使用の目的及び意義
五 使用の方法及び期間
六 使用機関の基準に関する説明
七 外国から分配されたヒトES細胞を使用する場合には、当該ヒトES細胞が樹立指針と同等の基準に基づき樹立されたものであることの説明
八 その他必要な事項
3 使用計画書には、使用責任者の略歴、研究業績及び教育研修の受講歴を示す書類を添付するものとする。
(倫理審査委員会の意見聴取)
第13条 学長は、前条第1項の規定に基づき、使用責任者から使用計画の実施の了承を求められたときは、科学的妥当性及び倫理的妥当性について倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき使用計画の指針及びこの規則に対する適合性を確認するものとする。
(文部科学大臣への届出)
第14条 学長は、使用計画の実施を了承するに当たっては、前条に規定する手続の終了後、理事長を通じて、あらかじめ、当該使用計画の実施について文部科学大臣に届け出るものとする。
2 前項の場合には、学長は、次に掲げる書類を文部科学大臣に提出するものとする。
一 使用計画書
二 使用責任者の略歴、研究業績及び教育訓練の受講歴を示す書類
三 倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類
四 倫理審査委員会に関する規則
2 学長は、前項本文の了承を求められたときは、当該変更の妥当性について倫理審査委員会の意見を求めるとともに、当該意見に基づき当該変更の指針及びこの規則に対する適合性を確認するものとする。
3 学長は、第1項本文の了承をしたときは、速やかに、使用計画変更書(使用計画の変更の内容及び理由を記載した書類をいう。)並びに当該変更に係る倫理審査委員会における審査の過程及び結果を示す書類を添付して、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
(使用計画の実質的な内容に係らない変更)
第16条 学長は、第12条第2項第2号に掲げる事項に変更があったときは、速やかに、その旨を文部科学大臣に届け出るものとする。
2 学長は、前条第1項ただし書の使用計画の実質的な内容に係らない変更があったときは、その旨を倫理審査委員会及び文部科学大臣に届け出るものとする。
(進行状況の報告)
第17条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用の進行状況を学長及び倫理審査委員会に随時報告するものとする。
2 生殖細胞の作成を行う使用責任者は、前項の報告に加え、少なくとも毎年1回、生殖細胞の作成状況を記載した報告書を作成し、学長に提出するものとする。
3 大学は、ヒトES細胞の使用に関する資料の提出、調査の受入れその他文部科学大臣が必要と認める措置に協力するものとする。
(ヒトES細胞の使用の終了)
第18条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用を終了したときは、速やかに、使用の結果を記載した報告書を作成し、学長に提出するものとする。
2 学長は、前項の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを倫理審査委員会及び文部科学大臣に提出するものとする。
(分配の要件)
第19条 大学は、分配機関へのヒトES細胞の寄託のほか、他の使用機関、臨床利用機関又は海外機関に対してヒトES細胞を分配することができるものとする。
2 大学からの臨床利用機関に対するヒトES細胞の分配は、当該ヒトES細胞が分配機関から分配を受けたものでない場合であって、契約その他の方法により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
一 ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及び人の胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から生殖細胞の作成を行わないこと。
二 分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配又は譲渡しないこと。
三 ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画が定められていること。
四 個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。
五 作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知すること。
六 前各号に掲げる要件に反することとなった場合においては、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。
3 大学による海外機関へのヒトES細胞の分配は、分配先との契約その他方法により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。
一 分配するヒトES細胞の使用が、当該海外機関が存する国又は地域の制度等に基づき承認されたものであること。
二 ヒトES細胞の取扱いについて、当該海外機関が存する国又は地域の制度等を遵守すること。
三 分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配しないこと。
四 ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及びヒトの胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から作成した生殖細胞を用いたヒト胚の作成を行わないこと。
五 基礎的研究及び医療目的以外の利用を行わないこと。
六 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞を分配しようとする場合、個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。
七 前各号に掲げる要件に反することとなった場合においては、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。
4 使用責任者は、臨床利用機関又は海外機関に対してヒトES細胞を分配したときは、分配の状況を記載した報告書を作成し、学長に提出するものとする。
5 学長は、前項の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを倫理審査委員会及び文部科学大臣に提出するものとする。
(分化細胞の取扱い)
第20条 学長は、作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知するものとする。
2 生殖細胞の作成を行う者は、作成した生殖細胞を譲渡する場合には、前項の通知を行うほか、当該生殖細胞の取扱いについて、譲渡先との契約その他の方法により、次に掲げる事項が確保されることを確認しなければならない。
一 生殖細胞は、次のいずれかに資する基礎的研究に用いられること。
イ ヒトの発生、分化及び再生機能の解明
ロ 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発
二 生殖細胞を用いてヒト胚を作成しないこと。
三 生殖細胞を他の機関に譲渡しないこと。
四 前3号に掲げる生殖細胞の取扱いの状況について、必要に応じ、譲渡先から報告を求めることができること。
3 前項の規定に基づき、生殖細胞を譲渡しようとするときは、使用責任者は、あらかじめ、学長の了承を求めるものとする。
5 学長は、第3項の了承をしたときは、速やかに、その旨を倫理審査委員会及び文部科学大臣に報告するものとする。
(研究成果の公開)
第21条 ヒトES細胞の使用により得られた研究成果は、知的財産権及び個人情報の保護等に支障が生じる場合を除き、公開するものとする。
(事務)
第22条 ヒトES細胞の使用に関する事務は、研究推進部研究基盤推進課において処理する。
(雑則)
第23条 この規則に定めるもののほか、ヒトES細胞の使用に関し必要な事項は、別に定める。
附則
1 この規則は、令和6年10月1日から施行する。
2 次に掲げる規則は、廃止する。
一 東京工業大学ヒトES細胞の使用に関する規則(平成20年規則第42号)
二 国立大学法人東京医科歯科大学ヒトES細胞の使用に関する規則(平成25年規則第87号)