○国立大学法人東京科学大学の保有する個人情報の開示決定等に係る審査基準

令和6年11月5日

制定

国立大学法人東京科学大学(以下「大学」という。)における国立大学法人東京科学大学個人情報保護規程(令和4年規程第7号。以下「規程」という。)第32条第45条及び第53条に規定する開示等の決定に係る審査基準を次のとおり定める。

第1 開示決定等の審査基準

規程第32条の規定に基づく開示又は不開示の決定(以下「開示決定等」という。)は、以下により行う。

1 開示する旨の決定(規程第32条第1項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1) 開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれていない場合

(2) 開示請求に係る保有個人情報の一部に不開示情報が含まれている場合であって、当該不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるとき。ただし、この場合には、不開示情報に該当する部分を除いて開示する。

(3) 開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、個人の権利利益を保護するために特に当該保有個人情報を開示する必要があると認めるとき(規程第30条)

2 開示しない旨の決定(規程第32条第3項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1) 開示請求に係る保有個人情報すべてが不開示情報に該当する場合(開示請求に係る保有個人情報の一部に不開示情報が含まれている場合であって、当該不開示情報に該当する部分を他の部分と容易に区分して除くことができない場合を含む。)

(2) 開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することになる場合(規程第31条)

(3) 開示請求に係る保有個人情報を大学において保有していない場合又は開示請求の対象が規程第74条に該当する場合若しくは規程第24条第1項に規定する保有個人情報に該当しない場合

(4) 法以外の法律における適用除外規定により開示請求の対象外のものである場合

(5) 開示請求書に規程第27条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合若しくは同条第2項に規定する開示請求に係る保有個人情報の本人(規程第26条第2項の規定による開示請求にあっては、開示請求に係る保有個人情報の本人の代理人)であることを示す書類に不備がある場合又は開示請求手数料が納付されていない場合。ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする。

(6) 開示請求が権利濫用に当たる場合。この場合において、権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求に応じた場合の大学の業務への支障等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う。大学の事務を混乱又は停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。

3 前2項の判断に当たっては、保有個人情報に該当するかどうかの判断は「第2 保有個人情報該当性に関する基準」に、開示請求に係る保有個人情報に記録されている情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は「第3 不開示情報該当性に関する基準」に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は「第4 部分開示に関する基準」に、裁量的開示ができる場合に該当するかどうかの判断は「第5 裁量的開示に関する基準」に、保有個人情報の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は「第6 保有個人情報の存否に関する情報に関する基準」に、それぞれよる。

4 開示する保有個人情報の利用目的については、利用目的を本人に明示することにより、本人若しくは第三者の権利利益を害するおそれ又は国の機関等が行う事務若しくは事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は、通知することを要しない(規程第32条第2項)

第2 保有個人情報該当性に関する基準

開示請求の対象が規程第24条第1項に規定する保有個人情報に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「職員等が職務上作成し、又は取得した」とは、大学の役員又は職員(以下「職員等」という。)が当該職員等に割り当てられた仕事を遂行する立場で、すなわち公的立場において作成し、又は取得したことをいう。

2 「組織的に利用する」とは、作成又は取得に関与した職員等個人の段階のものではなく、組織の業務上必要な情報として利用することをいう。

3 「大学が保有している」とは、大学が当該個人情報について事実上支配している状態(当該個人情報の利用、提供、廃棄等の取扱いについて判断する権限を有している状態を意味する。)をいう。したがって、例えば、大学が個人情報をクラウドサービス上で利用しており、物理的には当該個人情報が当該クラウドサービスを提供する事業者の管理するサーバ上に保管されている場合であっても、これに含まれ得る。

4 「法人文書に記録されているものに限る」とは、保有個人情報が文書、図画、電磁的記録等何らかの媒体に記録されているものでなければならないことをいう。

したがって、職員等が単に記憶しているにすぎない個人情報は、保有個人情報には該当しない。また、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものに記録されている個人情報も、これらが法人文書に該当しないため保有個人情報に該当しない。

第3 不開示情報該当性に関する基準

開示請求に係る保有個人情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

なお、当該判断は、開示決定等を行う時点における状況に基づき行う。

1 開示請求者に関する情報(規程第28条第1号)について

規程第28条第1号が適用される場合は、開示することが深刻な問題を引き起こす可能性がある場合であり、その運用に当たっては、具体的状況に即して慎重に判断するものとする。

2 開示請求者以外の個人に関する情報(規程第28条第2号)について

(1) 開示請求者以外の個人に関する情報(規程第28条第2号本文)

ア 「個人に関する情報」には、生存する個人に関する情報のほか、死亡した個人に関する情報も含まれる。ただし、事業を営む個人の当該事業に関する情報は、規程第28条第3号の規定により判断する。

イ 「その他の記述等」とは、氏名及び生年月日以外の記述又は個人別に付された番号その他の符号等をいい、映像や音声も、それによって特定の個人を識別できることができる限りにおいて含まれる。

ウ 照合の対象となる「他の情報」には、その保有者が他の機関である場合のほか、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれ、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、通例は「他の情報」に含まれない。しかし、事案によっては、個人の権利利益を保護する観点からは、個人情報の取扱いに当たって、より慎重な判断が求められる場合があり、当該個人を識別するために実施可能と考えられる手段について、その手段を実施するものと考えられる人物が誰であるか等をも視野に入れつつ、合理的な範囲で判断する。

エ 「開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、匿名の作文、無記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連したり、開示すれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものをいう。

(2) 法令(条例を含む。)の規定により開示請求者が知ることができる情報等(規程第28条第2号イ)

ア 「法令(条例を含む。以下この節において同じ。)の規定」には、何人に対しても等しく当該情報を開示すること又は公にすることを定めている規定のほか、特定の範囲の者に限り当該情報を開示することを定めている規定が含まれる。

イ 「慣行として」とは、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として知ることができ、又は知ることが予定されていることで足りる。ただし、当該保有個人情報と同種の情報について、本人が知ることができた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。

ウ 「知ることが予定されている」とは、実際には知らされていないが、将来的に知らされることが予定されている場合をいう。なお、「予定」とは将来知らされることが具体的に決定していることは要しないが、当該情報の性質、利用目的等に照らして通例知らされるべきものと考えられることをいう。

(3) 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(規程第28条第2号ロ)

開示請求者以外の個人に関する情報について、不開示にすることにより保護される開示請求者以外の個人の権利利益よりも、開示請求者を含む人の生命、健康等の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は開示する。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。

(4) 公務員等の職務の遂行に関する情報(規程第28条第2号ハ)

ア 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該職務の遂行についての情報を意味する。例えば、苦情相談に対する担当職員の応答内容に関する情報などがこれに含まれる。

イ 公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、開示した場合、公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けた上で、規程第28条第2号イに該当する場合には、例外的に開示する。

例えば、大学において職員の人事異動をホームページ等で公表するなど情報公開申合せによることなく氏名を公表する慣行がある場合や、大学により作成され、又は大学が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合等は、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当する。

3 法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(規程第28条第3号)について

(1) 法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(規程第28条第3号本文)

ア 「法人その他の団体」(以下「法人等」という。)には、株式会社等の会社法(平成17年法律第86号)上の会社、一般財団法人、一般社団法人、学校法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人は、規程第28条第3号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、同条第5号の規定に基づき判断する。

イ 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等に関する情報を意味する。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、規程第28条第2号の不開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。

ウ 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断する。

(2) 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(規程第28条第3号ただし書)

当該情報を不開示にすることによって保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益と、これを開示することにより保護される人の生命、健康等の利益とを比較衡量し、後者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は規程第28条第3号の不開示情報に該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。

なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。

(3) 当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ(規程第28条第3号イ)

ア 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切を含み、「競争上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位をいう。また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位が広く含まれる。

イ 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類及び性格のものがあり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の権利の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と大学との関係等を十分考慮して適切に判断するものとする。

なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

(4) 任意に提供された情報(規程第28条第3号ロ)

ア 法人等又は事業を営む個人から開示しないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報とする。

イ 「大学の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供されたもの」には、大学の要請を受けずに法人等又は事業を営む個人から提供された情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から開示しないとの条件が提示され、大学が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれる。

ウ 「開示しないとの条件」とは、第三者に対して当該情報を提供しないとの条件を意味する。また、特定の利用目的以外の目的には使用しないとの条件も含まれる。

エ 「条件」については、大学の側から開示しないとの条件で情報の提供を申し入れた場合も、法人等又は事業を営む個人の側から開示しないとの条件を付すことを申し出た場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法としては、黙示的なものも含まれる。

オ 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等又は個人において開示しないこととしていることだけでは足りない。

カ 開示しないとの条件を付することの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。開示しないとの条件が付されていても、現に当該情報が公になっていたり、同種の情報が既に開示されているなどの事情がある場合には、規程第28条第3号ロには該当しない。

4 審議、検討等に関する情報(規程第28条第4号)について

(1) 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院並びにこれらに属する機関を指し、「内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報」とは、これらの国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(以下「国の機関等」という。)の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程の各段階において行われている、例えば、具体的な意思決定の前段階としての施策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、委員会等又は大学が開催する有識者等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議に関連して作成され、又は取得された情報を指す。

(2) 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、開示することにより、外部からの圧力、干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれをいい、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。

(3) 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報等を開示することにより、誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合等をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が開示されることによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

(4) 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十分なままで情報を開示することにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれをいい、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

(5) 「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を開示することの必要性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、開示することによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。

(6) 審議、検討等に関する情報については、国の機関等としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、規程第28条第4号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられる。

ただし、当該意思決定が施策決定の一部の構成要素である場合、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる場合等審議、検討等の過程が重層的又は連続的な場合には、当該意思決定が行われた後であっても、施策全体の意思決定又は次の意思決定に関して規程第28条第4号に該当するかどうか判断する必要がある。

また、意思決定が行われた後であっても、審議、検討等に関する情報が開示されることにより、国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合は、規程第28条第4号に該当する。

5 事務又は事業に関する情報(規程第28条第5号)について

(1) 「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(規程第28条第5号)

ア 「次に掲げるおそれ」として規程第28条第5号イからまでに掲げたものは、例示的に規定されているものである。これらの事務又は事業の外にも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等は、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」として判断する。

イ 「当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断する趣旨である。

規程第28条第5号の規定は大学の恣意的判断を許容する趣旨ではなく、各規定の要件の該当性は客観的に判断される必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、個人の権利利益を保護する観点からの開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」といえるものであることが求められる。

ウ 「支障」の程度は、名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。

(2) 「監査、検査、取締り、試験、又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(規程第28条第5号イ)

ア 「監査」(主として監察的見地から、事務若しくは事業の執行又は財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保すること。)、「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)及び「租税の賦課若しくは徴収」(国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入金を取ること。)に係る事務は、いずれも事実を正確に把握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがある事務である。

イ これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等のように、事前に開示すると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となったり、法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。また、事後であっても、例えば、監査内容等の詳細についてこれを開示すると今後の法規制を免れる方法を示唆することになるようなものは、規程第28条第5号イに該当し得る。

(3) 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(規程第28条第5号ロ)

国の機関等が一方の当事者となる契約、交渉又は争訟に係る事務に関する情報の中には、例えば、用地取得等の交渉方針や用地買収計画案を開示することにより、適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、交渉、争訟等の対処方針等を開示することにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。

(4) 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(規程第28条第5号ハ)

国の機関等が行う調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、①知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報等であって、一定の期日以前に開示することにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの、②試行錯誤の段階の情報について開示することにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。

(5) 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(規程第28条第5号ニ)

国の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分、能力等の管理に関すること。)に係る事務は、当該機関の組織としての維持の観点から行われ、一定の範囲で当該組織の自律性を有するものである。人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。

(6) 「独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(規程第28条第5号ホ)

独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関連する情報については、企業経営という事業の性質上、企業経営上の正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは不開示とする。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その範囲は、規程第28条第3号の法人等の場合とは当然異なり、より狭いものとなる場合があり得ることに留意する。

第4 部分開示に関する基準

開示請求に係る保有個人情報について、規程第29条に基づき部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合」とは、開示請求について審査した結果、開示請求に係る個人情報に、不開示情報に該当する情報が含まれている場合をいう。

規程第28条では、保有個人情報に全く不開示情報が含まれていない場合の開示義務が定められているが、規程第29条第1項の規定により、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。

2 「容易に区分して除くことができるとき」

(1) 当該保有個人情報のどの部分が不開示情報に該当するかという区分けが困難な場合だけでなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示を行う義務はない。

「区分」とは、不開示情報に該当する部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情報の内容が認識できないように墨塗り、被覆、電磁的記録の削除等を行うことをいう。

(2) 保有個人情報に含まれる不開示情報を除くことは、当該保有個人情報が文書に記録されている場合、文書の複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。

一方、録音テープ、ビデオテープ、磁気ディスク等に記録された保有個人情報については、不開示情報と開示情報の技術的分離が困難な場合がありうる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうちの一人から開示請求があった場合や、録画されている映像中に開示請求者以外の者が映っている場合などがあり得る。このような場合には、不開示情報を容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。

なお、電磁的記録に記録された保有個人情報については、紙に出力した上で、不開示情報を区分して除いて開示することも考えられる。電磁的記録をそのまま開示することを求められた場合は、不開示情報の部分のみを削除することの技術的可能性等を総合的に判断する必要がある。既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。

3 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」とは、義務的に開示すべき範囲を定める趣旨である。なお、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、本法の目的に沿った合目的的な裁量に委ねられている。すなわち、不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗り潰すかなどの方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念的には一まとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、不開示義務に反するものではない。

4 開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合(規程第29条第2項)

(1) 開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報について、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、残りの部分を開示しても開示請求者以外の個人の権利利益の保護の観点から支障が生じないと認められるときは、当該残りの部分については、規程第28条第2号に規定する不開示情報には該当しないものとして取り扱う。したがって、当該部分は、他の不開示情報の規定に該当しない限り、規程第29条第1項の規定により開示することになる。

ただし、規程第29条第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体として不開示とする。

(2) 開示請求者以外の特定の個人を識別させる要素を除去し誰の情報であるかが分からなくなっても、開示することが不適当であると認められる場合もあることに留意する。例えば、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未公表の論文等開示すると個人の権利利益を害するおそれのあるものは不開示とする。

第5 裁量的開示に関する基準

開示請求に係る保有個人情報について、規程第30条に基づき裁量的開示ができる場合に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

「個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるとき」とは、規程第28条各号の不開示情報に該当する情報であるが、高度な判断により、当該個人の権利利益を保護するために特に開示する必要があると認められる場合をいう。規程第28条各号においても、当該規定により保護する利益と当該情報を開示することによる利益との比較衡量が行われる場合があるが、ここでは、規程第28条の規定が適用され不開示となる場合であっても、なお開示する必要性があると認められる場合には、開示することができるものとする。

第6 保有個人情報の存否に関する情報に関する基準

開示請求に対し、保有個人情報の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合(規程第31条)に該当するかどうかの判断は、以下の基準により行う。

1 「開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、開示請求に係る保有個人情報が実際にあるかないかにかかわらず、開示請求された保有個人情報の存否について回答すれば、開示請求に含まれる情報が結合することにより、実質的に不開示情報を開示することとなる場合をいう。例えば、本人以外の者が行った苦情相談に関する情報について、本人から開示請求があった場合等が考えられる。

2 当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否する場合に行政手続法(平成5年法律第88号)第8条に基づき示さなければならない処分の理由については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった保有個人情報の存否を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかどうかをできる限り具体的に提示する。

また、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否しなければならない。

第7 訂正決定等の審査基準

規程第45条の規定に基づく訂正をする旨又は訂正をしない旨の決定(以下「訂正決定等」という。)は、以下により行う。

1 訂正請求の対象は、「事実」とし、評価・判断には及ばないものとする。ただし、評価した行為の有無、評価に用いられたデータ等は事実に該当する。

2 訂正をする旨の決定(規程第45条第1項)は、調査等の結果、訂正請求のとおり保有個人情報が事実でないことが判明し、当該請求に理由があると認める場合に行う。

この場合の訂正は、当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で行う。

なお、請求内容に理由があるかどうかを判断するために行う調査は、保有個人情報の利用目的の達成の範囲内で行えば足り、訂正をすることが利用目的の達成に必要でないことが明らかな場合は、特段の調査を行う必要はない。具体例としては、過去の事実を記録することが利用目的であるものについて現在の事実に基づいて訂正することを請求するような場合が考えられる。

3 訂正しない旨の決定(規程第45条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1) 保有個人情報の訂正に関して法以外の法律又は当該法律に基づく命令の規定により特別の手続が定められている場合

(2) 規程第42条第1項各号に規定する保有個人情報に係る訂正請求でない場合

(3) 保有個人情報の開示を受けた日から90日以内に行われた訂正請求でない場合

(4) 訂正請求書に規程第43条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は同条第2項に規定する訂正請求に係る保有個人情報の本人(規程第42条第2項の規定による訂正請求にあっては、訂正請求に係る保有個人情報の本人の代理人)であることを示す書類に不備がある場合。ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、訂正請求者に補正を求めるものとする。

(5) 調査等の結果、訂正請求に係る保有個人情報が事実でないことが判明しない場合又は事実関係が明らかにならなかった場合

(6) 訂正をすることが、当該保有個人情報の利用目的の範囲を超える場合

(7) 調査の結果判明した事実が、請求時点において実際に記録されていた内容とも、請求の内容とも異なることが判明した場合。ただし、必要な場合は、判明した事実に即して、職権により訂正を行うものとする。

第8 利用停止決定等の審査基準

規程第53条の規定に基づく利用停止をする旨又は利用停止をしない旨の決定(以下「利用停止決定等」という。)は、以下により行う。

1 利用停止をする旨の決定(規程第53条第1項)は、請求に係る保有個人情報が次のいずれかに該当し、当該請求に理由があると認める場合に行う。

(1) 保有個人情報(特定個人情報を除く。(2)及び(3)において同じ。)が、あらかじめ本人の同意を得ずに、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱われている場合

(2) 保有個人情報が、偽り等の不正の手段により取得されたものである場合又は要配慮個人情報に該当する保有個人情報が、あらかじめ本人の同意を得ないで取得されたものである場合

(3) 保有個人情報が、本人の同意を得ずに、又はその他規程第14条第1項又は第15条に規定する手続き若しくは条件に違反して第三者(外国にある第三者を含む。)に提供されている場合

(4) 特定個人情報である保有個人情報が行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)第19条の規定に違反して提供されている場合

なお、利用停止は、利用停止請求に係る保有個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で行うものとし、例えば、当該保有個人情報について、そのすべての利用が違反していればすべての利用停止を、一部の利用が違反していれば一部の利用停止を行うものとする。

また、例えば、利用目的外の利用を理由として、本人から保有個人情報の消去を求められた場合には、個人情報の適正な取扱いを確保する観点から、当該利用目的外の利用を停止すれば足り、当該保有個人情報を消去するまでの必要はない。

2 利用停止しない旨の決定(規程第53条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。

(1) 保有個人情報の利用停止に関して法以外の法律又は当該法律に基づく命令の規定により特別の手続が定められている場合

(2) 規程第50条第1項各号に規定する保有個人情報に係る利用停止請求でない場合

(3) 保有個人情報の開示を受けた日から90日以内に行われた利用停止請求でない場合

(4) 利用停止請求書に規程第51条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は同条第2項に規定する利用停止請求に係る保有個人情報の本人(規程第50条第2項の規定による利用停止請求にあっては、利用停止請求に係る保有個人情報の本人の代理人)であることを示す書類に不備がある場合。ただし、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、利用停止請求者に補正を求めるものとする。

(5) 利用停止請求に理由があると認められない場合

(6) 利用停止することにより当該保有個人情報の利用目的に係る事務の性質上、当該事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる場合

1 この基準は、令和6年11月5日から施行し、次項の規定以外の規定は、令和6年10月1日から施行する。

2 国立大学法人東京工業大学の保有する個人情報の開示決定等に係る審査基準(平成17年4月1日制定)は、廃止する。

国立大学法人東京科学大学の保有する個人情報の開示決定等に係る審査基準

令和6年11月5日 種別なし

(令和6年11月5日施行)

体系情報
東京科学大学/ [全学規則]/第2編
沿革情報
令和6年11月5日 種別なし