○国立大学法人東京科学大学における人を対象とする生命科学・医学系研究及び実験調査研究に関する規程

令和6年10月1日

規程第150号

(目的)

第1条 この規程は、国立大学法人東京科学大学倫理審査規則(令和6年規則第110号)第3条の規定に基づき、東京科学大学(以下「大学」という。)における人を対象とする研究の実施(試料・情報の収集・分譲を行う機関における業務の実施を含む。)に携わる全ての関係者(以下「研究者等」という。)が、ヘルシンキ宣言及び「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「指針」という。)に定められている事項のほか、研究対象者の人権擁護の観点から必要な倫理的配慮を行い、もって人を対象とする研究の適切な推進を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この規程において「人を対象とする研究」とは、人を対象として次の各号のいずれかを目的として実施される生命科学・医学系研究(以下「生命科学・医学系研究」という。)及び人を対象として行動、環境、心身等に関する試料・情報を収集して行われる実験調査研究(以下「実験調査研究」という。)をいう。

 次に掲げるいずれかの事項を通じて、国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの回復若しくは生活の質の向上に資する知識を得ること。

 傷病の成因(健康に関する様々な事象の頻度及び分布並びにそれらに影響を与える要因を含む。)の理解

 病態の理解

 傷病の予防方法の改善又は有効性の検証

 医療における診断方法及び治療方法の改善又は有効性の検証

 人由来の試料・情報を用いて、ヒトゲノム及び遺伝子の構造又は機能並びに遺伝子の変異又は発現に関する知識を得ること。

2 前項のほか、この規程における用語の定義は、指針の定めるところによる。

(理事長の責務)

第3条 理事長は、大学における人を対象とする研究の実施において次に掲げる事項について責務を負う。

 人を対象とする研究が、指針並びにこの規程及び研究計画書に従い、適正に実施されていることを必要に応じて確認すること。

 研究対象者への補償制度の整備に関すること。

 研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のために必要な措置を講じた上で、研究結果等、研究に関する情報が適切に公表されることを確保すること。

 研究に関する倫理並びに研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を実施すること。

 研究の実施に関する情報について、研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置かれることを確保すること。

 前各号のほか、大学における人を対象とする研究に関し必要な措置に関すること。

2 理事長は、指針の規程に基づく範囲で、前項の責務を実行するために必要な権限及び事務について、学長に委任する。

(倫理審査委員会)

第4条 学長は、人を対象とする研究倫理審査委員会(以下「倫理審査委員会」という。)として、次に掲げる委員会を置く。

 医学系倫理審査委員会

 歯学系倫理審査委員会

 理工学系倫理審査委員会

 指針対象外倫理審査委員会

2 倫理審査委員会は、人を対象とする研究の実施又は継続の適否、その他人を対象とする研究の実施に関し必要な事項について、倫理的及び科学的な観点から調査審議を行う。

 医学系倫理審査委員会

 歯学系倫理審査委員会

 理工学系倫理審査委員会

 指針対象外倫理審査委員会

3 この規程に定めるほか、倫理審査委員会に関する事項は、倫理審査委員会が別に定める。

(倫理審査委員会の構成)

第5条 倫理審査委員会は、次の各号に掲げる委員をもって組織する。

 医学・医療の専門家等、自然科学の有識者 若干人

 倫理学・法律学の専門家等、人文・社会科学の有識者 若干人

 研究対象者の観点も含めて一般の立場から意見を述べることのできる者 若干人

 その他学長が必要と認めた者 若干人

2 前項の委員の任期は2年とし、重任、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

(倫理審査委員会の委員長及び副委員長)

第6条 倫理審査委員会に委員長及び副委員長を置き、委員の互選による。

2 委員長は、委員会を招集し、その議長となる。

3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるときは、その職務を代行する。

(研究者等の基本的責務)

第7条 研究者等は、研究対象者の生命、健康及び人権を尊重して、人を対象とする研究を実施しなければならない。

2 研究者等は、法令、指針等を遵守し、倫理審査委員会の審査及び学長の許可を受けた研究計画書に従って、適正に人を対象とする研究を実施しなければならない。

3 研究者等は、人を対象とする研究を実施するに当たっては、原則としてあらかじめインフォームド・コンセントを受けなければならない。

4 研究者等は、研究対象者等及びその関係者からの相談、問合せ、苦情等(以下「相談等」という。)に適切かつ迅速に対応しなければならない。

5 研究者等は、人を対象とする研究の実施に携わる上で知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。人を対象とする研究の実施に携わらなくなった後も、同様とする。

6 研究者等は、地域住民等一定の特徴を有する集団を対象に、当該地域住民等の固有の特質を明らかにする可能性がある人を対象とする研究を実施する場合には、研究対象者等及び当該地域住民等を対象に、当該研究の内容及び意義について説明し、当該研究に対する理解を得るよう努めなければならない。

(教育・研修)

第8条 研究者等は、人を対象とする研究の実施に先立ち、人を対象とする研究に関する倫理並びに当該研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を受けなければならない。また、研究期間中も適宜継続して、教育・研修を受けなければならない。

(研究計画書の申請手続)

第9条 研究責任者は、人を対象とする研究を新たに実施し、又は変更した上で実施しようとするときは、指針に基づき、別に定める様式により、あらかじめ適切な研究計画書を作成しなければならない。

2 研究責任者は、人を対象とする研究の実施の適否について、倫理審査委員会の意見を聴かなければならない。ただし、実験調査研究については,研究対象者に対し特に倫理的配慮が必要な研究として理工学系倫理審査委員会が別に定めるものに限り、倫理審査委員会の意見を聴くものとする。なお、倫理審査委員会の意見を聴かない場合においては、第5条第2項中「倫理審査委員会の審査及び学長の許可を受けた研究計画書」とあるのは、「研究計画書」と読み替えるものとする。

3 研究代表者は、原則として、多機関共同研究に係る研究計画書について、一の倫理審査委員会による一括した審査を求めなければならない。

4 前2項の規定にかかわらず、公衆衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため緊急に人を対象とする研究を実施する必要があると判断される場合には、当該研究の実施について倫理審査委員会の意見を聴く前に学長の許可のみをもって当該研究を実施することができる。この場合において、研究責任者は、許可後、遅滞なく倫理審査委員会の意見を聴くものとし、倫理審査委員会が当該研究の停止若しくは中止又は研究計画書の変更をすべきである旨の意見を述べたときは、当該意見を尊重し、当該研究を停止し、若しくは中止し、又は研究計画書を変更するなど適切な対応をとらなければならない。

5 研究責任者は、多機関共同研究について倫理審査委員会の意見を聴く場合には、共同研究機関における人を対象とする研究の実施の許可、他の倫理審査委員会における審査結果及び当該研究の進捗に関する状況等の審査に必要な情報についても当該倫理審査委員会へ提供しなければならない。

6 学長は、研究責任者から人を対象とする研究の実施の許可を求められたときは、倫理審査委員会の意見を尊重し、人を対象とする研究の研究計画の許可又は不許可その他人を対象とする研究に関し必要な事項を決定するものとし、当該研究責任者へ審査結果通知書を交付するものとする。

7 前項の場合において、学長は、倫理審査委員会が不承認の意見を述べた人を対象とする研究については、その実施を許可してはならない。

(研究終了後の対応)

第10条 研究責任者は、人を対象とする研究(前条第2項の規定により倫理審査委員会の意見を聴かない研究を除く。)を終了(中止の場合を含む。以下同じ。)したときは、その旨及び当該研究結果の概要を文書又は電磁的方法により遅滞なく倫理審査委員会及び学長に報告しなければならない。

2 研究責任者は、人を対象とする研究を終了したときは、遅滞なく、研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のために必要な措置を講じた上で、当該研究の結果を公表しなければならない。また、人を対象とする研究であって、侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴い、かつ、介入を行うものについて、結果の最終の公表を行ったときは、遅滞なく学長へ報告しなければならない。

(研究の倫理的妥当性及び科学的合理性の確保等)

第11条 研究者等は、人を対象とする研究の倫理的妥当性又は科学的合理性を損なう又はそのおそれがある事実を知り、又は情報を得た場合(次項に該当する場合を除く。)には、速やかに研究責任者に報告しなければならない。

2 研究者等は、人を対象とする研究の実施の適正性又は研究結果の信頼を損なう又はそのおそれがある事実を知り、又は情報を得た場合には、速やかに研究責任者又は学長に報告しなければならない。

3 研究者等は、人を対象とする研究に関連する情報の漏えい等、研究対象者等の人権を尊重する観点又は当該研究の実施上の観点から重大な懸念が生じた場合には、速やかに学長及び研究責任者に報告しなければならない。

(研究の進捗状況の管理・監督及び有害事象等の把握・報告)

第12条 研究責任者は、人を対象とする研究の実施に係る必要な情報を取得するなど、人を対象とする研究の適正な実施及び研究結果の信頼性の確保に努めなければならない。

2 研究責任者は、前条第1項の規定による報告を受けた場合であって、人を対象とする研究の継続に影響を与えると考えられるものを得た場合(前条第3項に該当する場合を除く。)には、遅滞なく、学長に報告し、必要に応じて、当該研究を停止し、若しくは中止し、又は研究計画書を変更しなければならない。

3 研究責任者は、前条第2項又は第3項の規定による報告を受けた場合には、速やかに学長に報告し、必要に応じて、当該研究を停止し、若しくは中止し、又は研究計画書を変更しなければならない。

4 研究責任者は、人を対象とする研究の実施において、当該研究により期待される利益よりも予測されるリスクが高いと判断される場合又は当該研究により十分な成果が得られた若しくは十分な成果が得られないと判断される場合には、当該研究を中止しなければならない。

5 研究責任者は、研究計画書に定めるところにより、人を対象とする研究の進捗状況及び当該研究の実施に伴う有害事象の発生状況を倫理審査委員会及び学長に報告しなければならない。

6 研究責任者は、多機関共同研究を実施する場合には、共同研究機関の研究責任者に対し、当該研究に関連する必要な情報を共有しなければならない。

7 学長は、前条第2項若しくは第3項又は第2項若しくは第3項の規定による報告を受けた場合には、必要に応じて、倫理審査委員会の意見を聴き、速やかに当該研究の中止、原因究明等の適切な対応を取らなければならない。この場合、倫理審査委員会が意見を述べる前においては、必要に応じ、研究責任者に対し、当該研究の停止又は暫定的な措置を講ずるよう指示しなければならない。

(利益相反の管理)

第13条 研究者等は、人を対象とする研究を実施するときは、個人の収益等、当該研究に係る利益相反に関する状況について、その状況を研究責任者に報告し、透明性を確保するよう適切に対応しなければならない。

2 研究責任者は、人を対象とする研究であって、医薬品又は医療機器の有効性又は安全性に関する研究等、商業活動に関連し得る研究を実施する場合には、当該研究に係る利益相反に関する状況を把握し、研究計画書に記載しなければならない。

3 研究者等は、前項の規定により研究計画書に記載された利益相反に関する状況を、指針で規定するインフォームド・コンセントを受ける手続において研究対象者等に説明しなければならない。

(研究に係る試料及び情報等の保管)

第14条 研究者等は、人を対象とする研究に用いられる情報及び試料・情報に係る資料(試料・情報の提供に関する記録を含む。以下「情報等」という。)を正確なものにしなければならない。

2 研究責任者は、試料及び情報等を保管するときは、次項の規定による手順書に基づき、研究計画書にその方法を記載するとともに、研究者等が情報等を正確なものにするよう指導・管理し、試料及び情報等の漏えい、混交、盗難又は紛失等が起こらないよう必要な管理を行わなければならない。

3 学長は、試料及び情報等の保管に関する手順書を作成し、当該手順書に従って、人を対象とする研究に係る試料及び情報等が適切に保管されるよう必要な監督を行わなければならない。

4 研究責任者は、前項の規定による手順書に従って、第2項の規定による管理の状況について、学長へ報告しなければならない。

5 研究責任者は、情報等について、別に定める公正な研究活動に関する規則において定める期間、適切に保管しなければならない。また、国立大学法人東京科学大学個人情報保護規程(令和6年規程第176号)に定める仮名加工情報及び削除情報等((個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第41条第1項の規定により行われた加工の方法に関する情報にあっては、その情報を用いて仮名加工情報の作成に用いられた個人情報を復元できるものに限る。)、及び匿名加工情報及び加工方法等情報の保管(削除情報等又は加工方法等情報については、これらの情報を破棄する場合を除く。)についても同様とする。

6 学長は、試料及び情報等を廃棄する場合には、特定の個人を識別することができないようにするための適切な措置が講じられるよう必要な監督を行わなければならない。

(重篤な有害事象への対応)

第15条 研究者等は、侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、次項及び学長が定める手順書等に従い、研究対象者等への説明等、必要な措置を講ずるとともに、速やかに研究責任者に報告しなければならない。

2 研究責任者は、侵襲を伴う人を対象とする研究を実施しようとする場合には、あらかじめ、研究計画書に重篤な有害事象が発生した際に研究者等が実施すべき事項に関する手順を記載し、当該手順に従って適正かつ円滑に対応が行われるよう必要な措置を講じなければならない。

3 研究責任者は、人を対象とする研究に係る試料・情報の取得を研究協力機関に依頼した場合であって、研究対象者に重篤な有害事象が発生した場合には、速やかな報告を受けなければならない。

4 研究責任者は、侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、速やかに、当該有害事象や研究の継続等について倫理審査委員会に意見を聴いた上で、その旨を学長に報告するとともに、第2項及び学長が定める手順書等に従い、適切な対応を図らなければならない。また、速やかに当該研究の実施に携わる研究者等に対して、当該有害事象の発生に係る情報を共有しなければならない。

5 研究代表者は、多機関共同研究で実施する侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には、速やかに当該研究を実施する共同研究機関の研究責任者に対して、前項の対応を含む当該有害事象の発生に係る情報を共有しなければならない。

6 侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う人を対象とする研究であって介入を行うものの実施において予測できない重篤な有害事象が発生し、当該研究との直接の因果関係が否定できない場合には、当該有害事象が発生した研究機関の研究責任者は、学長に報告した上で、速やかに、第3項及び第4項の規定による対応の状況及び結果を厚生労働大臣に報告し、公表しなければならない。

(雑則)

第16条 この規程に定めるもののほか、人を対象とする研究の実施に関し必要な事項は、学長が別に定める。

1 この規程は、令和6年10月1日から施行する。

2 東京工業大学における人を対象とする研究の実施に関する規則(令和3年規則第62号)は、廃止する。

国立大学法人東京科学大学における人を対象とする生命科学・医学系研究及び実験調査研究に関す…

令和6年10月1日 規程第150号

(令和6年10月1日施行)