○東京工業大学における人を対象とする研究の実施に関する規則

令和3年7月2日

規則第62号

(目的)

第1条 この規則は,東京工業大学(以下「本学」という。)における人を対象とする研究の計画及び実施に関し,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「指針」という。)に定められている事項のほか,研究対象者の人権擁護の観点から必要な事項を定め,もって人を対象とする研究の適切な実施を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この規則における用語の定義は,次の各号に定めるところによる。

 人を対象とする研究 人を対象として次の又はを目的として実施される生命科学・医学系研究(以下「生命科学・医学系研究」という。)及び人を対象として行動,環境,心身等に関する試料・情報を収集して行われる実験調査研究(以下「実験調査研究」という。)をいう。

 次の(1)(2)(3)又は(4)を通じて,国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの回復若しくは生活の質の向上に資する知識を得ること。

(1) 傷病の成因(健康に関する様々な事象の頻度及び分布並びにそれらに影響を与える要因を含む。)の理解

(2) 病態の理解

(3) 傷病の予防方法の改善又は有効性の検証

(4) 医療における診断方法及び治療方法の改善又は有効性の検証

 人由来の試料・情報を用いて,ヒトゲノム及び遺伝子の構造又は機能並びに遺伝子の変異又は発現に関する知識を得ること。

 侵襲 人を対象とする研究目的で行われる穿刺,切開,薬物投与,放射線照射,心的外傷に触れる質問等によって,研究対象者の身体又は精神に障害又は負担が生じることをいう。侵襲のうち,研究対象者の身体又は精神に生じる傷害又は負担が小さいものを「軽微な侵襲」という。

 介入 人を対象とする研究目的で,人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因(健康の保持増進につながる行動及び医療における傷病の予防,診断又は治療のための投薬,検査等を含む。)の有無又は程度を制御する行為(通常の診療を超える医療行為であって,研究目的で実施するものを含む。)をいう。

 試料 血液,体液,組織,細胞,排泄物及びこれらから抽出したDNA等,人の体から取得されたものであって人を対象とする研究に用いられるもの(死者に係るものを含む。)をいう。

 研究に用いられる情報 研究対象者の診断及び治療を通じて得られた傷病名,投薬内容,検査又は測定の結果等,人の健康に関する情報その他の情報であって人を対象とする研究に用いられるもの(死者に係るものを含む。)をいう。

 試料・情報 試料及び人を対象とする研究に用いられる情報をいう。

 既存試料・情報 試料・情報のうち,次のいずれかに該当するものをいう。

 研究計画書が作成されるまでに既に存在する試料・情報

 研究計画書の作成以降に取得された試料・情報であって,取得の時点においては当該研究計画書の人を対象とする研究に用いられることを目的としていなかったもの

 遺伝情報 試料・情報を用いて実施される人を対象とする研究の過程を通じて得られ,又は既に試料・情報に付随している子孫に受け継がれ得る情報で,個人の遺伝的特徴及び体質を示すものをいう。

 研究対象者 次のいずれかに該当する者(死者を含む。)をいう。

 人を対象とする研究を実施される者(人を対象とする研究を実施されることを求められた者を含む。)

 人を対象とする研究に用いられることとなる既存試料・情報を取得された者

 研究対象者等 研究対象者に加えて,第22号に定める代諾者等を含めたものをいう。

十一 研究機関 人を対象とする研究を実施する法人若しくは行政機関又は人を対象とする研究を実施する個人事業主をいう。ただし,試料・情報の保管,統計処理その他の研究に関する業務の一部についてのみ委託を受けて行われる場合を除く。

十二 共同研究機関 研究計画書に基づいて共同して人を対象とする研究が実施される研究機関(当該研究のために研究対象者から新たに試料・情報を取得し,他の研究機関に提供を行う研究機関を含む。)をいう。

十三 研究協力機関 研究計画書に基づいて人を対象とする研究が実施される研究機関以外であって,当該研究のために研究対象者から新たに試料・情報を取得し(侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う試料の取得は除く。),研究機関に提供のみを行う機関をいう。

十四 試料・情報の収集・提供を行う機関 研究機関のうち,試料・情報を研究対象者から取得し,又は他の機関から提供を受けて保管し,反復継続して他の研究機関に提供を行う業務(以下「収集・提供」という。)を実施するものをいう。

十五 多機関共同研究 一の研究計画書に基づき複数の研究機関において実施される人を対象とする研究をいう。

十六 研究者等 研究責任者その他の人を対象とする研究の実施(試料・情報の収集・提供を行う機関における業務の実施を含む。)に携わる関係者をいう。ただし,研究機関に所属する者以外であって,次に掲げるいずれかの者は除く。

 新たに試料・情報を取得し,研究機関に提供のみを行う者

 既存試料・情報の提供のみを行う者

 委託を受けて人を対象とする研究に関する業務の一部についてのみ従事する者

十七 研究責任者 人を対象とする研究の実施に携わるとともに,所属する研究機関において当該研究に係る業務を統括する者をいう。

十八 研究代表者 多機関共同研究を実施する場合に,複数の研究機関の研究責任者を代表する研究責任者をいう。

十九 インフォームド・コンセント 研究の実施又は継続(試料・情報の取扱いを含む。)に関する研究対象者等の同意であって,当該研究の目的及び意義並びに方法,研究対象者に生じる負担,予測される結果(リスク及び利益を含む。)等について研究者等又は既存試料・情報の提供のみを行う者から十分な説明を受け,それらを理解した上で自由意思に基づいてなされるものをいう。

二十 適切な同意 試料・情報の取得及び利用(提供を含む。)に関する研究対象者等の同意であって,研究対象者等がその同意について判断するために必要な事項が合理的かつ適切な方法によって明示された上でなされたもの(このうち個人情報等については,国立大学法人東京工業大学個人情報保護規程(令和4年規程第7号。以下「保護規程」という。)における本人の同意を満たすもの)をいう。

二十一 代諾者 生存する研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者であって,当該研究対象者がインフォームド・コンセント又は適切な同意を与えることができる能力を欠くと客観的に判断される場合に,当該研究対象者の代わりに,研究者等又は既存試料・情報の提供のみを行う者に対してインフォームド・コンセント又は適切な同意を与えることができる者をいう。

二十二 代諾者等 代諾者に加えて,研究対象者が死者である場合にインフォームド・コンセント又は適切な同意を与えることができる者を含めたものをいう。

二十三 インフォームド・アセント インフォームド・コンセントを与える能力を欠くと客観的に判断される研究対象者が,実施又は継続されようとする研究に関して,その理解力に応じた分かりやすい言葉で説明を受け,当該研究を実施又は継続されることを理解し,賛意を表することをいう。

二十四 個人情報等 保護規程に定める個人情報,仮名加工情報,匿名加工情報及び個人関連情報をいう。

二十五 加工方法等情報 匿名加工情報の作成に用いた個人情報から削除した記述等及び個人識別符号並びに個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「保護法」という。)第43条第1項の規定により加工した方法に関する情報(その情報を用いて当該個人情報を復元することができるものに限る。)

二十六 有害事象 実施された,人を対象とする研究との因果関係の有無を問わず,研究対象者に生じた全ての好ましくない又は意図しない傷病若しくはその徴候(臨床検査値の異常を含む。)をいう。

二十七 重篤な有害事象 有害事象のうち,次のいずれかに該当するものをいう。

 死に至るもの

 生命を脅かすもの

 治療のための入院又は入院期間の延長が必要となるもの

 永続的又は顕著な障害・機能不全に陥るもの

 子孫に先天異常を来すもの

二十八 予測できない重篤な有害事象 重篤な有害事象のうち,研究計画書,インフォームド・コンセントの説明文書等において記載されていないもの又は記載されていてもその性質若しくは重症度が記載内容と一致しないものをいう。

二十九 モニタリング 人を対象とする研究が適正に行われることを確保するため,当該研究がどの程度進捗しているか並びにこの規則及び研究計画書に従って行われているかについて,研究責任者が指定した者に行わせる調査をいう。

三十 監査 研究結果の信頼性を確保するため,人を対象とする研究がこの規則及び研究計画書に従って行われたかについて,研究責任者が指定した者に行わせる調査をいう。

三十一 遺伝カウンセリング 遺伝医学に関する知識及びカウンセリングの技法を用いて,研究対象者等又は研究対象者の血縁者に対して,対話と情報提供を繰り返しながら,遺伝性疾患をめぐり生じ得る医学的又は心理的諸問題の解消又は緩和を目指し,研究対象者等又は研究対象者の血縁者が今後の生活に向けて自らの意思で選択し,行動できるよう支援し,又は援助することをいう。

三十二 部局 各学院,リベラルアーツ研究教育院,科学技術創成研究院,国際先駆研究機構(各先駆研究組織を除く。),各先駆研究組織,各共通教育組織及び各共通支援組織等をいう。

(学長の責務)

第3条 学長は,本学における人を対象とする研究の実施において次の各号に掲げる事項について責務を負う。

 人を対象とする研究が,この規則及び研究計画書に従い,適正に実施されていることを必要に応じて確認すること。

 研究対象者への補償制度の整備に関すること。

 研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のために必要な措置を講じた上で,研究結果等,研究に関する情報が適切に公表されることを確保すること。

 研究に関する倫理並びに研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を実施すること。

 研究の実施に関する情報について,研究対象者等に通知し,又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置かれることを確保すること。

 前各号のほか,本学における人を対象とする研究に関し必要な措置に関すること。

(倫理審査委員会)

第4条 学長は,人を対象とする研究の実施又は継続の適否その他研究に関し必要な事項について,倫理的及び科学的な観点から調査審議するため,人を対象とする研究倫理審査委員会(以下「倫理審査委員会」という。)を置かなければならない。

2 倫理審査委員会に関する事項は,学長が別に定める。

(研究者等の基本的責務)

第5条 研究者等は,研究対象者の生命,健康及び人権を尊重して,人を対象とする研究を実施しなければならない。

2 研究者等は,法令,指針等を遵守し,倫理審査委員会の審査及び学長の許可を受けた研究計画書に従って,適正に人を対象とする研究を実施しなければならない。

3 研究者等は,人を対象とする研究を実施するに当たっては,原則としてあらかじめインフォームド・コンセントを受けなければならない。

4 研究者等は,研究対象者等及びその関係者からの相談,問合せ,苦情等(以下「相談等」という。)に適切かつ迅速に対応しなければならない。

5 研究者等は,人を対象とする研究の実施に携わる上で知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。人を対象とする研究の実施に携わらなくなった後も,同様とする。

6 研究者等は,地域住民等一定の特徴を有する集団を対象に,当該地域住民等の固有の特質を明らかにする可能性がある人を対象とする研究を実施する場合には,研究対象者等及び当該地域住民等を対象に,当該研究の内容及び意義について説明し,当該研究に対する理解を得るよう努めなければならない。

(教育・研修)

第6条 研究者等は,人を対象とする研究の実施に先立ち,人を対象とする研究に関する倫理並びに当該研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を受けなければならない。また,研究期間中も適宜継続して,教育・研修を受けなければならない。

(研究計画書の作成・変更)

第7条 研究責任者は,人を対象とする研究を新たに実施し,又は変更した上で実施しようとするときは,別に定める様式により,あらかじめ適切な研究計画書を作成しなければならない。なお,研究対象者から取得された試料・情報について,研究対象者等から同意を受ける時点では特定されない将来の研究のために用いられる可能性又は他の研究機関に提供する可能性がある場合には,同意を受ける時点において想定される内容並びに実施される研究及び提供先となる研究機関に関する情報について研究対象者等が確認する方法を説明することとし,その説明について同意を受けた既存試料・情報を用いて研究を実施しようとする場合であって,当該同意を受けた範囲内における研究の内容(提供先等を含む。)が特定されたときは,当該研究の内容に係る研究計画書の作成又は変更を行わなければならない。

2 研究責任者は,人を対象とする研究の倫理的妥当性及び科学的合理性が確保されるよう,研究計画書を作成しなければならない。また,研究計画書の作成に当たって,研究対象者への負担並びに予測されるリスク及び利益を総合的に評価するとともに,負担及びリスクを最小化する対策を講じなければならない。

3 多機関共同研究を実施する研究責任者は,当該多機関共同研究として実施する人を対象とする研究に係る業務を代表するため,当該研究責任者の中から,研究代表者を選任しなければならない。

4 研究代表者は,多機関共同研究を実施しようとする場合には,各共同研究機関の研究責任者の役割及び責任を明確にした上で,一の研究計画書を作成又は変更しなければならない。

5 研究責任者は,人を対象とする研究に関する業務の一部について委託しようとする場合には,当該委託業務の内容を定めた上で,研究計画書を作成又は変更しなければならない。

6 研究責任者は,人を対象とする研究に関する業務の一部を委託する場合には,委託を受けた者が遵守すべき事項について,文書又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)により契約を締結するとともに,委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

7 研究責任者は,侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う研究であって通常の診療を超える医療行為を伴うものを実施しようとする場合には,当該研究に関連して研究対象者に生じた健康被害に対する補償を行うために,あらかじめ,保険への加入その他の必要な措置を適切に講じなければならない。

(倫理審査委員会への付議)

第8条 研究責任者は,人を対象とする研究の実施の適否について,倫理審査委員会の意見を聴かなければならない。ただし,実験調査研究については,研究対象者に対し特に倫理的配慮が必要な研究として倫理審査委員会が別に定めるものに限り,倫理審査委員会の意見を聴くものとする。なお,倫理審査委員会の意見を聴かない場合においては,第5条第2項中「倫理審査委員会の審査及び学長の許可を受けた研究計画書」及び第13条第1項中「学長の許可を受けた研究計画書」とあるのは,「研究計画書」と読み替えるものとする。

2 研究代表者は,原則として,多機関共同研究に係る研究計画書について,一の倫理審査委員会による一括した審査を求めなければならない。

3 前2項の規定にかかわらず,公衆衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため緊急に人を対象とする研究を実施する必要があると判断される場合には,当該研究の実施について倫理審査委員会の意見を聴く前に学長の許可のみをもって当該研究を実施することができる。この場合において,研究責任者は,許可後,遅滞なく倫理審査委員会の意見を聴くものとし,倫理審査委員会が当該研究の停止若しくは中止又は研究計画書の変更をすべきである旨の意見を述べたときは,当該意見を尊重し,当該研究を停止し,若しくは中止し,又は研究計画書を変更するなど適切な対応をとらなければならない。

4 研究責任者は,多機関共同研究について倫理審査委員会の意見を聴く場合には,共同研究機関における人を対象とする研究の実施の許可,他の倫理審査委員会における審査結果及び当該研究の進捗に関する状況等の審査に必要な情報についても当該倫理審査委員会へ提供しなければならない。

5 前各項の規定にかかわらず,研究者の職名変更又は改姓を伴う氏名変更等については,倫理審査委員会を通じて学長へ報告するものとし,倫理審査委員会での意見聴取を不要とする。

(学長による許可等)

第9条 学長は,研究責任者から人を対象とする研究の実施の許可を求められたときは,倫理審査委員会の意見を尊重し,人を対象とする研究の研究計画の許可又は不許可その他人を対象とする研究に関し必要な事項を決定するものとし,当該研究責任者へ審査結果通知書を交付するものとする。

2 前項の場合において,学長は,倫理審査委員会が不承認の意見を述べた人を対象とする研究については,その実施を許可してはならない。

3 前条第5項の規定により報告を受けた,人を対象とする研究の変更においては,学長の許可を不要とする。

(研究の概要の登録)

第10条 研究責任者は,介入を行う人を対象とする研究について,厚生労働省が整備するデータベース(Japan Registry of Clinical Trials: jRCT)等の公開データベースに,当該研究の概要をその実施に先立って登録し,研究計画書の変更及び当該研究の進捗に応じて更新しなければならない。また,それ以外の人を対象とする研究についても当該研究の概要をその研究の実施に先立って登録し,研究計画書の変更及び当該研究の進捗に応じて更新するよう努めなければならない。

2 前項の登録において,研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のため非公開とすることが必要な内容として,倫理審査委員会の意見を受けて学長が許可したものについては,この限りでない。

(研究の適正な実施の確保)

第11条 研究責任者は,研究計画書に従って人を対象とする研究が適正に実施され,その結果の信頼性が確保されるよう,当該研究の実施に携わる研究者をはじめとする関係者を指導・管理しなければならない。

2 研究責任者は,侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には,速やかに必要な措置を講じなければならない。

(研究終了後の対応)

第12条 研究責任者は,人を対象とする研究(第8条第1項の規定により倫理審査委員会の意見を聴かない研究を除く。)を終了(中止の場合を含む。以下同じ。)したときは,その旨及び当該研究結果の概要を文書又は電磁的方法により遅滞なく倫理審査委員会及び学長に報告しなければならない。

2 研究責任者は,人を対象とする研究を終了したときは,遅滞なく,研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のために必要な措置を講じた上で,当該研究の結果を公表しなければならない。また,人を対象とする研究であって,侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴い,かつ,介入を行うものについて,結果の最終の公表を行ったときは,遅滞なく学長へ報告しなければならない。

3 研究責任者は,介入を行う人を対象とする研究を終了したときは,第10条第1項で当該研究の概要を登録した公開データベースに遅滞なく,当該研究の結果を登録しなければならない。また,それ以外の人を対象とする研究についても当該研究の結果の登録に努めなければならない。

4 研究責任者は,通常の診療を超える医療行為を伴う人を対象とする研究を実施した場合には,当該研究を終了した後においても,研究対象者が当該研究の結果により得られた最善の予防,診断及び治療を受けることができるよう努めなければならない。

(インフォームド・コンセントを受ける手続き)

第13条 研究者等が人を対象とする研究を実施しようとするとき又は既存試料・情報の提供のみを行う者が既存試料・情報を提供しようとするときは,当該研究の実施について学長の許可を受けた研究計画書に定めるところにより,それぞれ指針の手順に準じて,原則としてあらかじめインフォームド・コンセントを受けるとともに,保護規程第15条第1項に定める外国にある者に提供する場合にあっては,指針に定める手続に従わなければならない。ただし,法令の規定により既存試料・情報を提供する場合又は既存試料・情報の提供を受ける場合については,この限りでない。

2 研究者等又は既存試料・情報の提供のみを行う者は,個人情報又は機器を取り扱わない人を対象とする研究として倫理審査委員会が認めた場合に限り,前項における文書によるインフォームド・コンセントに代えて,電磁的方法によりインフォームド・コンセントを受けることができる。

(代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の手続等)

第14条 研究者等又は既存試料・情報の提供のみを行う者が,前条の規定による手続において代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合には,指針に掲げる要件に配慮しなければならない。

2 研究者等又は既存試料・情報の提供のみを行う者が,代諾者からインフォームド・コンセントを受けた場合であって,研究対象者が人を対象とする研究を実施されることについて自らの意向を表することができると判断されるときには,インフォームド・アセントを得るよう努めなければならない。

3 研究責任者は,前項の規定によるインフォームド・アセントの手続を行うことが予測される人を対象とする研究を実施しようとする場合には,あらかじめ研究対象者への説明事項及び説明方法を研究計画書に記載しなければならない。

(研究により得られた結果等の説明)

第15条 研究責任者は,実施しようとする人を対象とする研究及び当該研究により得られる結果等の特性を踏まえ,当該研究により得られる結果等の研究対象者への説明方針を定め,研究計画書に記載しなければならない。当該方針を定める際には,結果等の説明について指針に掲げる全ての事項について考慮する必要がある。

2 研究者等は,研究対象者等からインフォームド・コンセントを受ける際には,前項における人を対象とする研究により得られた結果等の説明に関する方針を説明し,理解を得なければならない。その上で,研究対象者等が当該研究により得られた結果等の説明を希望しない場合には,その意思を尊重しなければならない。ただし,研究者等は,研究対象者等が研究により得られた結果等の説明を希望していない場合であっても,その結果等が研究対象者,研究対象者の血縁者等の生命に重大な影響を与えることが判明し,かつ,有効な対処方法があるときは,研究責任者に報告しなければならない。

3 研究責任者は,前項の規定により報告を受けた場合には,研究対象者等への説明に関して,説明の可否,方法及び内容について指針に掲げる観点を含めて考慮し,倫理審査委員会の意見を求めなければならない。

4 研究者等は,前項における倫理審査委員会の意見を踏まえ,研究対象者等に対し,十分な説明を行った上で,当該研究対象者等の意向を確認し,なお説明を希望しない場合には,説明してはならない。

5 研究者等は,研究対象者等の同意がない場合には,研究対象者の人を対象とする研究により得られた結果等を研究対象者等以外の人に対し,原則として説明してはならない。ただし,研究対象者の血縁者等が,研究により得られた結果等の説明を希望する場合であって,研究責任者が,その説明を求める理由と必要性を踏まえ,説明することの可否について倫理審査委員会の意見を聴いた上で,必要と判断したときはこの限りでない。

6 研究責任者は,人を対象とする研究により得られた結果等を取り扱う場合,その結果等の特性を踏まえ,医学的又は精神的な影響等を十分考慮し,研究対象者等が当該研究に係る相談を適宜行うことができる体制を整備しなければならない。また,研究責任者は,体制を整備する中で診療を担当する医師と緊密な連携を行うことが重要であり,遺伝情報を取り扱う場合にあっては,遺伝カウンセリングを実施する者や遺伝医療の専門家との連携が確保できるよう努めなければならない。

(研究の倫理的妥当性及び科学的合理性の確保等)

第16条 研究者等は,人を対象とする研究の倫理的妥当性又は科学的合理性を損なう又はそのおそれがある事実を知り,又は情報を得た場合(次項に該当する場合を除く。)には,速やかに研究責任者に報告しなければならない。

2 研究者等は,人を対象とする研究の実施の適正性又は研究結果の信頼を損なう又はそのおそれがある事実を知り,又は情報を得た場合には,速やかに研究責任者又は学長に報告しなければならない。

3 研究者等は,人を対象とする研究に関連する情報の漏えい等,研究対象者等の人権を尊重する観点又は当該研究の実施上の観点から重大な懸念が生じた場合には,速やかに学長及び研究責任者に報告しなければならない。

(研究の進捗状況の管理・監督及び有害事象等の把握・報告)

第17条 研究責任者は,人を対象とする研究の実施に係る必要な情報を取得するなど,人を対象とする研究の適正な実施及び研究結果の信頼性の確保に努めなければならない。

2 研究責任者は,前条第1項による報告を受けた場合であって,人を対象とする研究の継続に影響を与えると考えられるものを得た場合(前条第3項に該当する場合を除く。)には,遅滞なく,学長に報告し,必要に応じて,当該研究を停止し,若しくは中止し,又は研究計画書を変更しなければならない。

3 研究責任者は,前条第2項又は第3項による報告を受けた場合には,速やかに学長に報告し,必要に応じて,当該研究を停止し,若しくは中止し,又は研究計画書を変更しなければならない。

4 研究責任者は,人を対象とする研究の実施において,当該研究により期待される利益よりも予測されるリスクが高いと判断される場合又は当該研究により十分な成果が得られた若しくは十分な成果が得られないと判断される場合には,当該研究を中止しなければならない。

5 研究責任者は,研究計画書に定めるところにより,人を対象とする研究の進捗状況及び当該研究の実施に伴う有害事象の発生状況を倫理審査委員会及び学長に報告しなければならない。

6 研究責任者は,多機関共同研究を実施する場合には,共同研究機関の研究責任者に対し,当該研究に関連する必要な情報を共有しなければならない。

7 学長は,前条第2項若しくは第3項又は第2項若しくは第3項の規定による報告を受けた場合には,必要に応じて,倫理審査委員会の意見を聴き,速やかに当該研究の中止,原因究明等の適切な対応を取らなければならない。この場合,倫理審査委員会が意見を述べる前においては,必要に応じ,研究責任者に対し,当該研究の停止又は暫定的な措置を講ずるよう指示しなければならない。

(利益相反の管理)

第18条 研究者等は,人を対象とする研究を実施するときは,個人の収益等,当該研究に係る利益相反に関する状況について,その状況を研究責任者に報告し,透明性を確保するよう適切に対応しなければならない。

2 研究責任者は,人を対象とする研究であって,医薬品又は医療機器の有効性又は安全性に関する研究等,商業活動に関連し得る研究を実施する場合には,当該研究に係る利益相反に関する状況を把握し,研究計画書に記載しなければならない。

3 研究者等は,前項の規定により研究計画書に記載された利益相反に関する状況を,指針で規定するインフォームド・コンセントを受ける手続において研究対象者等に説明しなければならない。

(研究に係る試料及び情報等の保管)

第19条 研究者等は,人を対象とする研究に用いられる情報及び試料・情報に係る資料(試料・情報の提供に関する記録を含む。以下「情報等」という。)を正確なものにしなければならない。

2 研究責任者は,試料及び情報等を保管するときは,次項の規定による手順書に基づき,研究計画書にその方法を記載するとともに,研究者等が情報等を正確なものにするよう指導・管理し,試料及び情報等の漏えい,混交,盗難又は紛失等が起こらないよう必要な管理を行わなければならない。

3 学長は,試料及び情報等の保管に関する手順書を作成し,当該手順書に従って,人を対象とする研究に係る試料及び情報等が適切に保管されるよう必要な監督を行わなければならない。

4 研究責任者は,前項の規定による手順書に従って,第2項の規定による管理の状況について,学長へ報告しなければならない。

5 研究責任者は,情報等について,国立大学法人東京工業大学における公正な研究活動に関する規則(平成27年規則第16号)第11条第2項に定める期間,適切に保管しなければならない。また,保護規程に定める仮名加工情報及び削除情報等(保護法第41条第1項の規定により行われた加工の方法に関する情報にあっては,その情報を用いて仮名加工情報の作成に用いられた個人情報を復元できるものに限る。),及び匿名加工情報及び加工方法等情報の保管(削除情報等又は加工方法等情報については,これらの情報を破棄する場合を除く。)についても同様とする。

6 学長は,試料及び情報等を廃棄する場合には,特定の個人を識別することができないようにするための適切な措置が講じられるよう必要な監督を行わなければならない。

(モニタリング及び監査)

第20条 研究責任者は,人を対象とする研究の信頼性の確保に努めなければならず,侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う人を対象とする研究であって,介入を行うものを実施する場合には,当該研究の実施について学長の許可を受けた研究計画書に定めるところにより,モニタリング及び必要に応じて監査を実施しなければならない。

2 研究責任者は,当該研究の実施について,学長の許可を受けた研究計画書に定めるところにより適切にモニタリング及び監査が行われるよう,モニタリングに従事する者及び監査に従事する者に対して,必要な指導・管理を行わなければならない。

3 研究責任者は,監査の対象となる人を対象とする研究の実施に携わる者及びそのモニタリングに従事する者に,監査を行わせてはならない。

4 モニタリングに従事する者は,当該モニタリングの結果を研究責任者に報告しなければならない。また,監査に従事する者は,当該監査の結果を研究責任者及び学長に報告しなければならない。

5 モニタリングに従事する者及び監査に従事する者は,その業務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その業務に従事しなくなった後も同様とする。

(重篤な有害事象への対応)

第21条 研究者等は,侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には,次項及び学長が定める手順書等に従い,研究対象者等への説明等,必要な措置を講ずるとともに,速やかに研究責任者に報告しなければならない。

2 研究責任者は,侵襲を伴う人を対象とする研究を実施しようとする場合には,あらかじめ,研究計画書に重篤な有害事象が発生した際に研究者等が実施すべき事項に関する手順を記載し,当該手順に従って適正かつ円滑に対応が行われるよう必要な措置を講じなければならない。

3 研究責任者は,人を対象とする研究に係る試料・情報の取得を研究協力機関に依頼した場合であって,研究対象者に重篤な有害事象が発生した場合には,速やかな報告を受けなければならない。

4 研究責任者は,侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には,速やかに,当該有害事象や研究の継続等について倫理審査委員会に意見を聴いた上で,その旨を学長に報告するとともに,第2項及び学長が定める手順書等に従い,適切な対応を図らなければならない。また,速やかに当該研究の実施に携わる研究者等に対して,当該有害事象の発生に係る情報を共有しなければならない。

5 研究代表者は,多機関共同研究で実施する侵襲を伴う人を対象とする研究の実施において重篤な有害事象の発生を知った場合には,速やかに当該研究を実施する共同研究機関の研究責任者に対して,前項の対応を含む当該有害事象の発生に係る情報を共有しなければならない。

6 侵襲(軽微な侵襲を除く。)を伴う人を対象とする研究であって介入を行うものの実施において予測できない重篤な有害事象が発生し,当該研究との直接の因果関係が否定できない場合には,当該有害事象が発生した研究機関の研究責任者は,学長に報告した上で,速やかに,第3項及び第4項の規定による対応の状況及び結果を厚生労働大臣に報告し,公表しなければならない。

(個人情報の保護等)

第22条 研究者等は,個人情報の不適正な取得及び利用の禁止,正確性の確保等,安全管理措置,漏えい等の報告,開示等請求への対応などを含め,個人情報等の取扱いに関して,この規則の規定のほか,保護法,指針,保護規程及び国立大学法人東京工業大学個人情報管理規程(平成17年規程第6号。以下「管理規程」という。)を遵守しなければならない。

2 研究者等は,試料の取扱いに関して,この規則及び指針の規定を遵守するほか,保護法,保護規程及び管理規程の規定に準じて,必要かつ適切な措置を講じるよう努めなければならない。

3 研究者等は,死者の尊厳及び遺族等の感情に鑑み,死者について特定の個人を識別することができる試料・情報に関しても,この規則及び指針の規定を遵守するほか,保護法,保護規程及び管理規程の規定に準じて,適切に取り扱い,必要かつ適切な措置を講じるよう努めなければならない。

(雑則)

第23条 この規則に定めるもののほか,人を対象とする研究の実施に関し必要な事項は,実施部局の長が別に定める。

1 この規則は,令和3年7月2日から施行し,令和3年6月30日から適用する。

2 この規則施行の際,次に掲げる規則(以下「旧規則」という。)は,これを廃止する。

 東京工業大学における人を対象とする研究の実施に関する規則(平成27年規則第45号)

 東京工業大学におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に関する規則(平成28年規則第59号)

3 この規則適用の際に旧規則の規定により実施中の研究については,この規則に基づき許可を得ているものとみなし,当該研究における変更その他の手続きはこの規則によるものとする。

(令4.3.18規34)

この規則は,令和4年4月1日から施行する。

(令4.4.22規60)

1 この規則は,令和4年4月22日から施行し,改正後の東京工業大学における人を対象とする研究の実施に関する規則(以下「改正規則」という。)の規定は,令和4年4月1日から適用する。

2 この規則適用の際に改正前の東京工業大学における人を対象とする研究の実施に関する規則の規定により実施中の研究については,改正規則の規定に基づき許可を得ているものとみなし,令和4年4月1日以降に行う当該研究における変更その他の手続きは改正規則の規定によるものとする。

(令5.6.16規74)

この規則は,令和5年7月1日から施行する。

(令5.10.6規80)

この規則は,令和5年12月1日から施行する。

東京工業大学における人を対象とする研究の実施に関する規則

令和3年7月2日 規則第62号

(令和5年12月1日施行)

体系情報
[全学規則]/第7編 研究協力
沿革情報
令和3年7月2日 規則第62号
令和4年3月18日 規則第34号
令和4年4月22日 規則第60号
令和5年6月16日 規則第74号
令和5年10月6日 規則第80号